不妊症とは
不妊症とは、妊娠を望む男女のカップルがある一定期間避妊することなく通常の性交を行っているにもかかわらず妊娠しないことを言います。その一定期間については1年というのが一般的ではありますが、医学的な介入が必要な場合は期間を問わないと言われています。妊娠が上手くいかない原因は多岐にわたりますが、大きく分けると、女性に主な原因があるケースと男性にあるケースに分類できます。その割合は、不妊原因が女性因子のみ37%、男性因子のみ8%、両方が35%、原因不明5%となります。
不妊検査
不妊症が疑われる場合には、必要に応じて以下のような検査を行います。
女性が受ける不妊検査
不妊初診でかかられる患者様は極力月経5日目までに受診をお願いいたします。ただし月経周期が定まらない方やなかなか来ない方、お仕事が忙しく都合がつけられない方についてはその限りではありません。
また当院では基本的に基礎体温測定をお願いしています。小さなお子様がいて難しい、つけるのがストレスになるなどやむを得ない事情がある方は担当医にお伝えください。
血液検査
不妊初診の方は月経5日目までに、女性ホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン)、プロラクチンや、甲状腺ホルモン、感染症(B型・C型肝炎、梅毒、HIV クラミジア抗体等)、抗精子抗体、抗ミュラー管ホルモン(AMH)などの検査をします。
経腟超音波検査
超音波検査は、子宮や卵巣の状態を観察する検査です。不妊症の原因となる婦人科疾患である「子宮筋腫」「子宮内膜症」「卵巣腫瘍」などの疾患がないか確認します。
また卵胞発育を確認し、排卵時期の推定や卵巣機能の評価を行います。
経腟的に見るため画像が鮮明で、かなり多くの情報を体に害を与えることがなく得ることができるため婦人科では最も頻回に行う検査です。不妊症外来では月経中にも行うことがありますが、内診が苦手など事情がある方は遠慮せずおしゃってください。極力善処いたします。
黄体ホルモン検査
黄体ホルモン検査は、排卵1週間後に採血して行います。通常は排卵に伴って卵巣から黄体ホルモンが分泌され、受精卵が着床しやすい状態に整えられます。このホルモンが十分に出ていないと着床障害の原因となりますので、黄体ホルモン補充療法などを検討します。
子宮卵管造影検査
子宮卵管造影は、精子の通り道となる卵管の閉塞や狭窄、子宮の奇形や病変がないかを調べる不妊症検査です。
月経中に予約に来ていただき、月経が終わり排卵が起きる前くらいの頃に行います。なお、クラミジア感染症の患者さまに卵管造影を行うと、クラミジアによる卵管炎の原因になることがあります。そのため初診の際に早めにクラミジア検査を行っています。
フーナー検査
フーナー検査は、性交後に膣内、頸管粘液内の運動精子の存在を調べる検査です。子宮内に十分な精子が侵入しているかどうかを予測することができます。排卵日の深夜または早朝に性交渉をして、翌日の朝一番で受診していただき、頸管粘液中に運動している精子がいるかどうかを調べます。フーナー検査で異常が出た場合、抗精子抗体などの免疫因子の存在のほか、乏精子症や精子無力症といった男性因子が存在する可能性があります。
男性が受ける不妊検査
精液検査
不妊症の原因は、女性と男性で割合が半々といわれています。そのため不妊症の原因検索として、精液の状態を知ることは基本的かつ大変重要な検査です。精液量、総精子数、精子濃度、総運動率、生存精子率、正常形態率などを検討します。精液は、2~7日の禁欲期間(射精しない期間)の後に採取します。なお精液所見は日々変動するため、1ヶ月に少なくとも2回の検査を行います。
一般不妊治療
タイミング療法
タイミング療法とは
不妊治療にはいくつかの方法がありますが、基本となるのがタイミング療法です。基礎体温表や超音波検査で排卵日を正確に予測し、妊娠の可能性が最も高い時期(排卵2日前から排卵日当日)に性交渉を行う方法です。
対象となる方
あらかじめ不妊症の検査を行い、卵管や精子の状態に問題がなく自然妊娠をのぞめる方が対象となります。
※治療開始前に男性には精液検査、女性には卵管造影検査を推奨しています。
治療の流れ
- 超音波検査で卵胞の大きさを計測し、排卵日を予測します。
- 月経周期により、来るタイミングに個人差がありますので担当医に来院日をご確認ください。状況により複数回の来院が必要になる場合があります。
※目安は月経が28~30日周期の場合、月経開始後12~14日頃です。 - その後、排卵予測日に性交渉していただきます。
- 妊娠反応が確認できないときは、タイミング療法を繰り返します。
治療回数・ステップアップ
年齢や不妊原因によりますが通常3~6周期でstep up(治療の段階を上げること)をお勧めしています。
人工授精
人工授精とは
⼈⼯授精とは、専⽤チューブを使⽤して精⼦を⼦宮内に直接注⼊し妊娠へ導く⽅法です。タイミング療法との違いは大きく2点で、精子が卵子に出会うまでに泳ぐ距離を短くできる点、採取された精液の中で動きの良い精子を濃縮して子宮内に届けられるという点です。
生殖補助医療のように採卵や移植といった処置は必要なく、女性の身体への負担は少ない不妊治療といえます。妊娠率は5~10%程度です。
対象となる方
人工授精は主に以下のような方が対象となります。また人工授精を行う際にはパートナーの承諾が必要です。
- 複数回のタイミング療法不成功例がある
- 軽度の乏精子症
- 性交障害・ED・性感染症・仕事の都合などで性交渉がとれない場合
治療当日の流れ
- ご主人に受診していただき採精室で採精していただくか、自宅で採精した精液をお持ちいただきます。(凍結精子を使用する場合ことも可能ですが、妊娠率は3~4%に低下しますのでお勧めはしておりません。)
- 精液の濃縮を行います。(所要時間:約60~90分)この間は、院内でお待ちいただいても、院外でお待ちいただいても構いません。院外でお待ちいただく場合はスタッフへお声掛けください。
- 内診室で、卵胞の状態や子宮の傾きを超音波で確認します。
- 腟内に腟鏡(クスコ)を挿入します。
- 腟内を洗浄します。
- 子宮内に細いカテーテルを挿入し、精液を注入します。(細いカテーテルを使用するため疼痛を伴うことはまれです。)ただしカテーテルが入りにくい場合は器具で子宮をけん引する必要があり、その際は多少痛みを伴う可能性があります。
治療回数・ステップアップ
4~6回人工授精をしても妊娠にいたらなかった場合は、体外受精や顕微授精を含めた治療方針の見直しを検討していきます。(回数はあくまで一般的な目安のため、ご相談の上治療方針を決めていきます。)